はじめに
「メンサ会員らしくIQでも論じてみるか!」と思い立って書くことにしました。
どうもIQが絶対的な「地頭」のよさとされている風潮を感じるのでそこの違和感を指摘したいというのが一つ。
もう一つは前から思っていたメンサ入会試験の問題点です。
これらを洗い出しながらIQについて考えていきましょう。
まずは馴染みのあるIQテストの図形問題から。
よくあるIQテスト
出典:IQテスト
IQテストと言われて思い浮かぶのは上図のようなものではないでしょうか。
並べられた図形のパターンを見抜き、空欄を埋めるやつです。
正解数に応じてスコアがIQとして算出されます。
詳しくは言えませんが、メンサの試験も似たようなものです。
さて、このテストを知能検査と比較する前にそもそもIQとは何かを確認します。
IQとは何か、その測り方
調べればいっぱい出てくるのでごく簡単に。
ざっくり言うと「100を基準値として人間の知能を数値化したもの」です。
この数値化を行うために多様な手法が編み出されてきました。
一昔前に主流だったのが年齢算出型です。
ビネー式がこれにあたり、精神年齢÷生活年齢×100で導きます。
現在は偏差値を用いた偏差知能指数が一般的なようですね。
ウェクスラー式、キャッテル式などが採用しています。
(田中ビネーVの成人向けテストは偏差知能指数です)
様々な検査の開発は知能の多面的な評価を可能にする一方、同じ「IQ」でも複数の数値が存在するという事態を生んでしまっています。
検査法によって標準偏差が違うからです。
標準偏差はウェクスラー式なら15、キャッテル式なら24になっています。
IQが高めの場合、標準偏差が大きい方式で換算すればより高い数値になります。
なのでメディアではキャッテル式に換算して数値を高く見せることが多いようです。
(ちなみにキャッテルCFITは24でないようです。ここら辺の話は以下の記事がわかりやすいので興味のある方はどうぞ)
IQの定義・性質、高い人の特徴、よくある質問とMENSA会員からの回答 | Shake's Thoughts - Shakeの考察記録
それでは代表的な検査の一つであるウェクスラー式の測定法を世間のIQテストと比べてみましょう。
知能検査、IQテストの限界
ウェクスラー式知能検査における成人向けテストがWAISです。
現在は第四版のWAIS-IVが用いられています。
以下の論文に概要があるので気になる方はご覧ください。
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/133081/201317050B/201317050B0002.pdf
さて、WAISの測定法ですが、論文のp.11にいい図があったので抜粋します。
3~5個の項目からなる指標を4つ用います。
これらを組み合わせたものが全検査IQとして導出されるわけです。
そして、先ほどのような世間一般でいわれるIQテストは「行列推理」に分類されます。
ここまで来ると、たった1項目でIQを測ろうとするのは無理があることがわかります。
項目数が多ければいいというものでもありませんがそれにしても少なすぎです。
ハワード・ガードナー氏が提唱した多重知能理論という説があります。
批判もあるようですが、頭の良さは一つではないという考えには同意です。
WAISでユーモアが図れるでしょうか? 音楽の才能は?
学問的に洗練されてきたこの検査でさえ人間の能力を知るには足りないのです。
こういう特徴を持つ人はこの指標のスコアが高い、といった傾向は存在するかもしれません。
しかし個性を失った扱いやすい全検査IQが取り沙汰される限り、それは見出されないでしょう。
行列推理に絞った「IQテスト」では言わずもがなです。
もちろんこういったIQテストは娯楽として捉えている方が多いと思います。
問題なのは高IQ団体として規模も歴史も比類のないメンサの試験が、こうしたテストとほぼ同じであることです。
入会試験の問題点はそれだけではありません。
WAISでは学習効果(平たく言えば慣れ)の発生を避けるため、再度検査を受けるまでに最低1年を置きます。
メンサの試験も1年を置く点は同じですが、これだけ世間に広まったIQテストと同じ方式では予習し放題です。
行列推理のスコアさえ正確に測ることは難しいでしょう。
そんな「IQテスト」で入会しておいてなんですがこれらを踏まえて、メンサはせめてWAIS等の知能検査のみを入会基準とするべきでないかというのが僕の考えです。
ただ、流石に今からは変えられないだろうな、とも思っています。
終わりに
少々雑な論理展開もあったかもしれませんがご容赦ください。
IQは絶対的な頭の良さじゃないんだということが伝われば幸いです。
ただやっぱり、自分のIQはいくつだろう?とか考えるの楽しいですよね。
僕もよくウェブのテストとかで遊んでました。
娯楽として楽しむのはもちろんありだと思います。
大事なのはそれに引きずられないことです。
わかりやすい数字に惑わされず、確たる自分を持ちたいものです。
それでは今日はこの辺で。
【わかりやすい数字に惑わされてる記事たち】